ポイント解説は行(11首)

point-1藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)

第18番
藤原敏行朝臣
(ふじわらのとしゆきあそん)

すみの江の 岸による波 よるさへや 夢のかよひ路 人めよくらむ


☆ すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
★ すみのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらん


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味1. すみの江(現在の大阪市住吉区の海辺)の岸にうち寄る波の「よる」ということばのように、どうしてわたしは、夜の夢のなかまでも、恋するあなたの家へ通う路で、人目を避けるのでしょう。

2. すみの江(現在の大阪市住吉区の海辺)の岸にうち寄る波の「よる」ということばのように、どうしてあなたは、夜の夢のなかまでも、人目を避けようとするのでしょう。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  人には言えない恋愛関係だったのでしょうか?夢でまで人目を避けなければならないとは、辛いことですね。この和歌の解釈は二説あります。1.は、人目を避けているのは詠み手。2.は、人目を避けているのは恋人側というものです。1.と2.では、「夢のかよひ路」の解釈に違いがあり、1.は「夢をみる」と「恋人の家へ向かう路」を掛けていますが、2.は「夢をみる」の意味だけとなります。古来より1.の解釈の方が採られてきたようですが、あなたはどちらがお好きですか?

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原敏行は、いまから1050年ほど前の官僚です。さほど高い地位へは登りませんでしたが、実務官僚として務めました。書道と和歌に優れていたと伝わっています。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


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point-2藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)

第84番
藤原清輔朝臣
(ふじわらのきよすけあそん)

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき


☆ ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
★ ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ いまはこいしき


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 もし、これから先も生きていることがあるのなら、つらいことの多い今のことを懐かしく思い出すのだろうか。そのときはつらいと思った昔のことが、今では懐かしく思うことがあるのだから。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  過去にどんなつらいことがあったのでしょうか。そして、いままた、つらい思いを抱えているのですね。清輔のつらい経験がどんなものかは、この和歌からは推し量れませんが、これから先、もちろんそんな経験はしないで済むように願っていますが、もし、もう耐えられないと思うような、つらい経験をすることがあったら、この和歌を思い出してみてください。きっと、あなたに勇気をくれると思います。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原清輔は、いまから850年ほど前の中流貴族です。第79番の歌人である藤原顕輔の息子です。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-3法性寺入道前関白太政大臣(ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん)

第76番
法性寺入道前関白太政大臣
(ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん)

わたの原 こぎいでて見れば ひさかたの 雲ゐにまがふ 沖つ白波


☆ わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
★ わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもいにまごう おきつしらなみ


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 ひろびろとした大海原に、舟を漕ぎ出して、あたりを見渡すと、はるかかなたの水平線は海と空がひとつに溶け合って、雲と見間違えてしまうような沖の彼方の白波だなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  ひろびろと、どこまでも青い海と空が目の前に広がっているような和歌ですね。時の権力者に相応しい、おおらかで堂々とした和歌ではありませんか?

小倉百人一首_作者タイトルについて  法性寺入道前関白太政大臣は、本名を藤原忠通(ふじわらのただみち)です。いまから900年ほど前の貴族で、大臣の最高位である太政大臣に2度、幼少の天皇の補佐をする摂政(せっしょう)に2度、成人した天皇の補佐をする関白にも3度、任ぜられました。
関白と太政大臣を務めてた忠通が出家をして、法性寺(現在の京都市東山区)に隠居したことから、法性寺入道前太政大臣と呼ばれています。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-4藤原基俊(ふじわらのもととし)

第75番
藤原基俊
(ふじわらのもととし)

ちぎりおきし させもが露を いのちにて あはれことしの 秋もいぬめり


☆ ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
★ ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あわれことしの あきもいぬめり


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 お約束くださった、「わたしを頼りにしなさい」と詠まれた「させも草」におく恵みの露のようなお言葉をいのちのように大切にしてまいりましたのに、ああ、残念なことに今年も秋は過ぎ去ってしまいますよ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  この和歌は、基俊の息子である僧都光覚(そうずこうかく)が、維摩会(ゆいまえ)という法会の名誉な役である講師(こうじ)に選ばれないことを悲嘆して詠んだものです。藤原氏の最高権力者で、第76番の歌人でもある藤原忠通(ふじわらのただみち)が、以前、清水寺の観音さまにお参りしたときに「なほ頼め しめぢが原の させも草 わが世の中に あらむかぎりは(わたしを頼りにしなさいよ。みなの幸せを願って、大願をたてているのだからね。わたしが生きている間は安心ですよ)」と詠んだのを受けて、忠通に送ったのだそうです。どの時代も子供を思う親の気持ちは切ないですね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原基俊は、いまから900年ほど前の貴族です。父親は右大臣で、家柄の良い子息でしたが、傲慢な性格だったとの記録も残っていますが、そのせいか官位は高くなりませんでした。しかし、和歌を詠むのはとても上手だったそうです。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-5藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)

第52番
藤原道信朝臣
(ふじわらのみちのぶあそん)

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな


☆ あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
★ あけぬれば くるるものとは しりながら なおうらめしき あさぼらけかな


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 夜が明けると、また日は暮れて夜になり、あなたに逢えることはわかっているのだけど、それでも夜が明けるのが恨めしく思いますよ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  当時の女性は、宮仕えの女官以外は、昼間に出歩きませんから、夜になると、恋する女性のところを訪ね、朝になる前に立ち去る、という逢い方しかできませんでした。また夜になれば逢えることはわかっているのに、いま離れがたい気持ちが、しらじらと明けていく夜明けの薄明かりの情景とともに、しみじみと伝わってくる美しい和歌ですね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原道信は、右大臣を祖父に、太政大臣を父に持ち、第45番の歌人である謙徳公藤原伊尹(けんとくこうふじわらのこれただ)を母方の祖父に持つという、将来を約束された家柄の貴族でした。しかし、23歳の若さで亡くなってしまいました。和歌を詠むのが上手だったので、多くの人に惜しまれたそうです。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-6藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)

第51番
藤原実方朝臣
(ふじわらのさねかたあそん)

かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを


☆ かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
★ かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもいを


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 あなたのことをこんなにも想っているなんて言うこともできないのだから、伊吹山(いぶきやま/滋賀県と岐阜県の県境にある山と栃木県にある山と2説あります ※1)に生えるさしも草(ヨモギ)の香りのように、燃えるわたしの想いをあなたはご存知ないのでしょうね。

※1についての補足


小倉百人一首_タイトルの鑑賞  「えやはいぶきの」は、「言うことができるだろうか、いやできない」と、「伊吹山」とを「いぶき」で掛けていて、「さしも草」と「燃ゆる」も「も」を掛けています。このような言葉あそびが散りばめられています。このようなテクニックの上手さに感心するとともに、青々としたヨモギが茂っている京都からはるか離れた東国の山の香り、と自分の秘めた恋心を比較している、実方の爽やかな気性も感じられる和歌ですね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原実方は、いまから1050年ほど前の貴族です。多くの女性と華やかな恋愛をしたそうで、『源氏物語』の主人公である光源氏(ひかるげんじ)のモデルのひとりとも考えられています。『枕草子』の作者で、第62番の歌人である清少納言(せいしょうなごん)とも交流があったといわれています。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-7藤原義孝(ふじわらのよしたか)

第50番
藤原義孝
(ふじわらのよしたか)

君がため 惜しからざりし いのちさへ 長くもがなと 思ひけるかな


☆ きみがため おしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
★ きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 あなたにお逢いするためなら、死んでもよいと思っていたわたしの命ですが、お逢いできたいまとなっては、いつまでも長く生きていたいと思うようになったのです。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  恋が叶った喜びを素直に詠んだ和歌ですね。若くして亡くなった義孝のことを思うと、余計に切ない気持ちになる和歌です。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原義孝は、いまから1050年ほど前の貴族です。第45番の歌人である謙徳公藤原伊尹(けんとくこうふじわらのこれただ)の三男で、順風満帆な人生を送るはずでしたが、流行した天然痘(てんねんとう)のために、21歳の若さで亡くなりました。姿かたちが美しく、信心深い穏やかな性格だったそうです。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-8文屋朝康(ふんやのあさやす)

第37番
文屋朝康
(ふんやのあさやす)

白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける


☆★ しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 草葉におかれた白露に、風がしきりに吹いている秋の野は、その露が風に散り乱れて、紐に通されていない美しい宝石やガラスのビーズが散らばっているかのようだなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  白く輝く露が、きらきら光ながら、ころころと転がっている様子が情景が目に浮かぶような和歌ですね。秋の日に、こんな光景を探してみてくださいね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  文屋朝康は、いまから1100年ほど前の下級官僚です。第22番の歌人である文屋康秀(ふんやのやすひで)の息子ともいわれていますが、その生涯はよくわかっていません。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-9藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

第34番
藤原興風
(ふじわらのおきかぜ)

たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに


☆ たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
★ たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 いったい誰を心の友としようか・・・。古木と名高い高砂(現在の兵庫県高砂市)の松のほかに、年老いたものはいないのだけど、その高砂の松でさえ、昔なじみの友ではないのに。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  若い皆さんには、なかなかこの和歌の境遇を想像するのは難しいかもしれませんね。年をとって、昔なじみの友人も次々と世を去り、ひとりこの世を生きている寂しさを詠んだものです。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原興風は、いまから1100年ほど前のさほど地位の高くない官僚です。和歌を詠むのが上手なのに加え、琴の名手としても知られています。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-10春道列樹(はるみちのつらき)

第32番
春道列樹
(はるみちのつらき)

山川に 風のかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり


☆ やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
★ やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあえぬ もみじなりけり


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 山のなかを流れる川に、風が架けた、川を堰き止めるように造られたしがらみは、川面にたくさん散って流れかねている紅葉なのだなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  山のなかを流れる清流に、紅葉が散っている様子が目に浮かびませんか?色合いの美しさとともに、山のなかの空気の清浄さも感じられるようです。

小倉百人一首_作者タイトルについて  春道列樹は、1100年ほど前の下級官僚です。和歌を詠むのが上手でしたが、その生涯は詳しくわかっていません。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


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