ポイント解説31番~40番

point-1平兼盛(たいらのかねもり)

第40番
平兼盛
(たいらのかねもり)

しのぶれど 色にいでにけり わが恋は ものや思ふと 人のとふまで


☆ しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
★ しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 誰にも知られないように隠してきたのに、わたしの恋心は、とうとう顔色に出るまでになってしまいました。「恋の悩みですか?」とまわりの人に尋ねられてしまうほどに。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  この和歌は、村上天皇(むらかみてんのう)の御前で行なわれた「天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)」の結びとして詠まれたものです。歌合(うたあわせ)とは、左右から一首ずつ和歌を詠み、優劣をつけるものです。第41番の壬生忠見(みぶのただみ)の和歌と競われました。二首の素晴らしさに、誰も優劣をつけられず、村上天皇も判断をくだされなかったそうですが、密かにこの和歌を口ずさんでおられたので、この和歌を勝ちとしたそうです。第41番の和歌とあわせて詠んでみてくださいね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  平兼盛は、いまから1050年ほど前の中級官僚です。第15番の歌人である光孝天皇(こうこうてんのう)の曾孫にあたり、父の代に苗字を与えられ、皇族ではなくなりました。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


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point-2参議等(さんぎひとし)

第39番
参議等
(さんぎひとし)

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき


☆ あさじふの おののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
★ あさじうの おののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこいしき


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 ススキ(茅)や細い竹(篠)がまばらに生えている野原の「しの」のように、わたしは恋を心にしのんできましたが、しのびきれずに、どうしてこんなにもあなたを恋しいと想うのでしょうか。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  和歌のはじめの「浅茅生の 小野の篠原」の部分は、後半を引き出すための言葉あそびのようなもので、少しわかりにくく感じるかもしれませんが、後半の優雅な言葉はこびに、歌人の切なくも美しい恋心が伝わってくるように感じませんか?

小倉百人一首_作者タイトルについて  参議等は、本名を源等(みなもとのひとし)といいます。いまから1100年ほど前の官僚です。等は嵯峨天皇(さがてんのう)の孫ですが、参議は職名で、貴族としてはまあまあの地位でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-3右近(うこん)

第38番
右近
(うこん)

忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人のいのちの 惜しくもあるかな


☆ わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの おしくもあるかな
★ わすらるる みをばおもわず ちかいてし ひとのいのちの おしくもあるかな


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 あなたから忘れられる、わたしの身の辛さは気にはしません。それよりも、あんなにも愛を誓ったあなたが、神さまの怒りをかって、命がちぢまりはしないかと、心配になってしまうのです。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  忘れられても愛した相手の身を心配するけなげな和歌ですね。この和歌は、相手を想う右近の切ない気持ちを詠んだ、とも、愛の誓いを破った相手への皮肉、とも解釈することができますが、やはり素直に、たとえ捨てられても愛した相手の身を案じている、と読み取りたいですね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  右近は、いまから1100年ほど前の宮廷女官です。当時の女性は、皇族や大貴族の娘でなければ名前は伝わることが少なかったので、右近の本名もわかりません。従五位上右近少将(じゅごいのじょううこんのしょうしょう)という役職に就いていた父親の藤原季縄(ふじわらのすえなわ)から、「右近」と呼ばれていました。醍醐天皇(だいごてんのう)の皇后である藤原穏子(ふじわらのおんし)に仕え、和歌を残しました。


注1)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。

注2)女性は、本名すら伝わることも稀なので、正確な読み方もわからない場合が多いです。混乱を避けるため、女性の名前は一般的に音読みされます。訓読みが浸透している女性のみ訓読みも記すことにします。


point-4文屋朝康(ふんやのあさやす)

第37番
文屋朝康
(ふんやのあさやす)

白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける


☆★ しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 草葉におかれた白露に、風がしきりに吹いている秋の野は、その露が風に散り乱れて、紐に通されていない美しい宝石やガラスのビーズが散らばっているかのようだなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  白く輝く露が、きらきら光ながら、ころころと転がっている様子が情景が目に浮かぶような和歌ですね。秋の日に、こんな光景を探してみてくださいね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  文屋朝康は、いまから1100年ほど前の下級官僚です。第22番の歌人である文屋康秀(ふんやのやすひで)の息子ともいわれていますが、その生涯はよくわかっていません。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-5清原深養父(きよはらのふかやぶ)

第36番
清原深養父
(きよはらのふかやぶ)

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ


☆ なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
★ なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 夏の短い夜は、まだ夜が始まったばかりだと思っているうちに、あっという間に明けてしまうなぁ。月が西へ傾く暇もないではないか。いったい、月は雲のどこに隠れるのだろうか。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  月に見とれているうちに、夜を明かしてしまったのでしょうか。それとも、夜通しの宴会をしていたのでしょうか。夜があっという間に明けてしまうことを惜しんだ和歌です。朝の早い夏の空にほんわりと浮いている月が目に浮かびませんか?

小倉百人一首_作者タイトルについて  清原深養父は、いまから1100年ほど前のさほど地位の高くない官僚です。第42番の歌人である清原元輔(きよはらのもとすけ)は孫、『枕草子』の作者として有名な第62番の歌人である清少納言(せいしょうなごん)は、曾孫にあたります。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-6紀貫之(きのつらゆき)

第35番
紀貫之
(きのつらゆき)

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける


☆ ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
★ ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににおいける


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 あなたは、さあね、昔のままの心なのでしょうか。わかりませんね。でも、昔なじみのこの里には、昔のままに梅の花の香りが匂っていますね。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  貫之が、長谷寺(はせでら/現在の奈良県桜井市)にお参りに行ったときの宿で詠んだ和歌です。長谷寺は、観音信仰が篤く、多くの都人がお参りしました。『源氏物語』で、源氏の君が探していた恋人の娘である玉鬘(たまかずら)が源氏の君の侍女に見出されたのも長谷寺でした。貫之も何回もお参りをしていて、定宿としていた宿があったのですが、しばらく足が遠のいていたので、宿の主人が「昔どおりに宿はちゃんとありますのに。」と、無沙汰を遠まわしに責めたときに、貫之は、その宿に生えている梅の枝を折り、返した和歌なのだそうです。宿の主人も少し緊張気味だったでしょうけれど、この和歌で、きっと昔どおりに和やかになったのでしょうね。

小倉百人一首_作者タイトルについて  紀貫之は、いまから1100年ほど前のさほど地位の高くない官僚ですが、和歌を詠むのがとても上手で、『万葉集』に並ぶ歌集『古今集』や六歌仙を選びました。第33番の歌人である紀友則(きのとものり)の従兄弟にあたります。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-7藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

第34番
藤原興風
(ふじわらのおきかぜ)

たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに


☆ たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
★ たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 いったい誰を心の友としようか・・・。古木と名高い高砂(現在の兵庫県高砂市)の松のほかに、年老いたものはいないのだけど、その高砂の松でさえ、昔なじみの友ではないのに。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  若い皆さんには、なかなかこの和歌の境遇を想像するのは難しいかもしれませんね。年をとって、昔なじみの友人も次々と世を去り、ひとりこの世を生きている寂しさを詠んだものです。

小倉百人一首_作者タイトルについて  藤原興風は、いまから1100年ほど前のさほど地位の高くない官僚です。和歌を詠むのが上手なのに加え、琴の名手としても知られています。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-8紀友則(きのとものり)

第33番
紀友則
(きのとものり)

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ


☆ ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ
★ ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずこころなく はなのちるらん


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 陽の光の暖かでのどかな、こんな春の日に、桜の花は、どうして落ち着きもなく散り急いでるのだろう。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  友則の生きた時代、ただ「花」といえば「桜の花」を示しました。春の陽だまりの静かななかに、桜の花びらがはらはらと散っている様子が目に浮かぶようですね。散る桜を惜しんでいるのでしょうか。ぽっかりと休みができたのでしょうか。なにをすることなくぼんやりと桜を眺めている、友則の心穏やかに過ごす春のある一日の情景でしょうか。

小倉百人一首_作者タイトルについて  紀友則は、『六歌仙』を選んだ第35番の歌人である紀貫之(きのつらゆき)の従兄弟で、いまから1100年ほど前のさほど地位の高くない官僚です。和歌を詠むのが上手でした。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-9春道列樹(はるみちのつらき)

第32番
春道列樹
(はるみちのつらき)

山川に 風のかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり


☆ やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
★ やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあえぬ もみじなりけり


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 山のなかを流れる川に、風が架けた、川を堰き止めるように造られたしがらみは、川面にたくさん散って流れかねている紅葉なのだなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  山のなかを流れる清流に、紅葉が散っている様子が目に浮かびませんか?色合いの美しさとともに、山のなかの空気の清浄さも感じられるようです。

小倉百人一首_作者タイトルについて  春道列樹は、1100年ほど前の下級官僚です。和歌を詠むのが上手でしたが、その生涯は詳しくわかっていません。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


point-10坂上是則(さかのうえのこれのり)

第31番
坂上是則
(さかのうえのこれのり)

朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪


☆★ あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき


小倉百人一首_タイトル 小倉百人一首_タイトルの意味 ほのぼのと夜が明けていくころ、外を眺めると、有明の月の光かと思うほどに、吉野の里(現在の奈良県南部)に真っ白な雪が降りつもっているなぁ。

小倉百人一首_タイトルの鑑賞  この和歌は、是則が大和国(現在の奈良県)の地方官として出掛けたときに、詠んだと考えられています。雪の降った朝を思い出してみてください。外がぼんやりと明るくて、いつもと違う雰囲気でしょう。是則の気持ちに共感しませんか?

小倉百人一首_作者タイトルについて  坂上是則は、いまから1100年ほど前の官僚です。武人として名高い坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)の子孫ですが、蹴鞠や和歌といった文化面で名を馳せ、宇多法皇(うだほうおう)のお出掛けにもお供をして、和歌を詠みました。


注)☆は旧仮名遣い、★は現代仮名遣いよみです。
旧仮名遣いは、仮名のとおりに発音しないものがあるので連記します。
市販されている百人一首カルタは、☆表記になっていますので、☆と★を見比べながら、読んでみてください。


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